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氷河の波でサーフィン [海と船]

氷河の波でサーフィン

最近(おそらくこの8月)、アラスカのある氷河(Child's glacier)の末端崩落による波(高さ25フィート=7.62m)で300m近くの距離を無事サーフィンに成功したという人達(Garrett McNamaraとKealii Mamala)がいて、その映像が公表されました。この映像の一部はイギリスのBBCでもとりあげられています。



以前、このブログでダーウィンがビーグル号に乗っている時期の日記を取り上げた記事の中で、南米の南端にあるティエラ・デル・フエゴのビーグル水道というところを小さなボートで辿っている途中、岸に上がって対岸の氷河を眺めているときに、その氷河の末端の崩落による波でダーウィン達が乗ってきていたボートが危機的状態に陥ったということを取り上げたことがありました。

そのことに関するダーウィンの"ビーグル号航海記"からの引用:

"半マイル(注:マイルを海里とすると約926m)の距離にある氷の垂直な断崖を鑑賞して、もっと断片が落下することを希望していた。遂に一つの氷塊が轟音を伴って落ちたと見る間に、滑らかな波の面が、われわれに向って押し寄せてくるのを見た。水兵たちは全力をつくして速くボートに駆けつけた。ボートが波に激突されて、粉砕される可能性があきらかだったからである。一人の水兵が艇首に手をかけた時、渦巻いた崩波が迫って来た。彼は幾度か弾ねとばされたが、負傷もせず、ボートは3度も高く持ち上げられて叩き落とされたが、別に損害はなかった。艦(注:ビーグル号)からは100マイルも離れており、悪くすれば糧食も火器もなく、取り残されたかもしれないので、これは全く幸運なことであった。"("航海記"岩波文庫版(中); "日記"では1833年1月29日付けの記事)

(南米パタゴニアのビーグル水道内の氷河のひとつ;ダーウィンが通った頃より氷量は減っていると考えられます)

氷河崩落の規模の相違は分かりませんが、ふたつ並べてみると興味深いものがあります。時代の相違による技術力一般の変化(ダーウィンの乗っていたボートは手漕ぎと風力で動く)と、もしかすると気候変動というもうひとつの観点にもここで思い至ることも出来るでしょうか。氷河の後退ということも近年話題になっているわけです。
(もっとも、ダーウィン達の場合は岸にボートをあげてる時のことだったので、水面にあれば波は乗り切れるものだったわけで、動力そのものは問題ではありませんが。)




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日の出前(船上) [海と船]

日の出前(船上)

ある日の日の出前(この時の日の出は4時55分頃)の写真から..

日の出に向かって進む..
4:37am

同様に左舷から..
4:46am

底辺のそろった雲の列..
4:49am

そして、日の出直後、見上げれば有明の月..
5:04am

アレッ、日の出の写真がないよ..
そうなんです、日の出の写真は難しくてなかなか満足のいくのが撮れません。修行します。


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黒潮(その4;色の完結編) [海と船]

黒潮(その4; 色の完結編)

まず最近の2枚の写真を、比較しながら見てみましょうか..


A.トカラ海峡(屋久島の南)の黒潮本流まっただなかの海面

B.沖縄本島太平洋側のサンゴ礁の浜から

これらの写真のうちで、1枚目は黒潮本流の流れている深い海の海面のものです。2枚目は黒潮系の水にひたされているサンゴ礁リーフの内側の浅い海の面のものです。
注: どちらも肉眼ではもう少し水面からの反射がまぶしく、いわゆる"キラキラ"してる。


前にこのブログの"黒潮(その3; 色)"という記事で、底の見えない深いきれいな海はなぜ青いのかということの基本的な説明を試みました。その説明は、海の中では水の分子が太陽光のスペクトル(虹の"7色")のうちで赤い波長の方の光を吸収するために、太陽からの光が青い色の光として見えるようになるのだ、というような論法によるものでした。

Encyclopaedia Britannicaの画像から


ところが黒潮の色調の解説としてはこれだけでは実はまだ十分でなく、黒潮の独特の黒みを帯びた紺色を説明するにはもう少し詰めが必要になります。太陽光が海水の中で赤い波長の部分を吸収されて青みを帯びたものとなり、ゆえに海の中では光が青く見える、ということは説明それ自体としては良いのです。が、そのままだったら光は吸収されつつも原則としてどこまでも一方的に底の方に進むだけで、海面上の我々の目には届かないことになってしまいます。海中から光が目に届かなければ海は真っ黒に見えてしまうわけですね。(海面でのまぶしい反射は別問題です。)
海からの青い光が海面上から見えるためには海中からその光をこちらに跳ね返す働きが必要なわけです。そのような海中比較的深くから青くなった光を海面に向かって返すのはじつは深い海に漂う植物プランクトンなどの浮遊物の(肉眼レベルでは微小の)粒子だということです。

さて、黒潮というのは他の海流に比べて、植物プランクトンが繁殖するに必要とする栄養分の少ない海流で、そのため植物プランクトンが少ないと言われています。ところが植物プランクトンは上で述べた浮遊物の粒子なので、植物プランクトンが少なければ海面上にいる人の目に届く光は少なくて、ゆえに明度がきわめて低くなり、これが黒潮の黒っぽい濃紺の色調の理由とされているというわけです。(上掲写真Aと下の写真C参照)
(注:黒潮そのものは魚の餌となる食べ物の源泉としての植物プランクトンが少ないのですが、その水温の高さにより他の水域との潮目で多くのプランクトンが発生するわけで、ゆえにそこで食物連鎖により豊かな魚類資源がもたらされるということであるようです。黒潮に乗る回遊魚も実は潮目に多い餌を食べつつ動いているのだろうとのことです。)

C.プランクトンの多い潮目付近の海面:犬吠埼沖

(肉眼ではもっと暗いですが、水中からの光の陰影を強調して示すために明度を上げています。)



さて、これに対して、リーフの内側のようなサンゴ礁由来の白い砂が底にある浅い海では、海底からの反射が十分ありますので、濃い紺色にはならず、水底の様々な色をも含んだ浅い水の色としてきれいなエメラルドブルーとかコバルトブルーといわれるような独特の色となるわけですね。(写真B参照)

こういうわけで、南の海のイメージとして例えば明るいブルーないし明るいグリーンの水を思い浮かべる場合も多いかと思いますが、そのような水面はサンゴ礁由来の浅い海ぐらいにしか見られない、大洋のなかでは稀とも言える程度のもので、大部分の南の海洋では、黒潮そのものよりは明るいとは言え、海面は礁湖のものよりもっとずっと濃い色をしているわけです。
船で緯度の低い(南の)熱帯の島に行くということは、最近では定期航路がないということで、今はほとんどなくなってしまい、大体が飛行機で行くわけですから、途中高度が高いがゆえに、散乱による空の色とほとんど見分けの付かない色の海の上を飛び、高度を下げたと思ったらほんの短時間だけ本来の濃紺色に近い色の海とその中にリーフの白い波の縁取りのある浅いブルーまたはグリーンの礁湖または水道と島が見えて、あっという間に着陸してしまえば、もうリーフの先にある力強く海流の流れる外洋を見ることはほとんどないというわけですね。

ということで、亜熱帯の沖縄諸島やもう少し南の台湾までぐらいなら、あえて船ででかけて外洋の海を見てみるというのもそれなりの興味はあるだろうと思うわけです。もっとも海面に変化を多く見ることがなければこれは退屈なことであることは認めざるを得ません。でも、やや逆説的かもしれませんが、観光の場としてのサンゴ礁の海はある意味でありふれていますが、本来の外洋を見るという機会は最近では一般にはかなり限られてきているように思うので、そういうこともあえて外洋の方に焦点を当ててみた理由のひとつです。サンゴ礁の海のほうは変化があって楽しいですけどね。私はサンゴ礁は好きですよ。

外洋の雄大な海流を見ているうちにいろいろなことに思いが至るものです。漠然とした海はとりとめがないし、スケール感をつかみにくいわけですが、海流はそれ自体が長大な距離を動いているので遠い世界に実感としてのスケールで思いを馳せられます。また発生源がどこかは分からないけれど水に沈まず長期間海面に漂う若干の漂流物を見てしまったとすれば、それは残念なことですが、グローバルな海洋汚染に考えが及んだりもします。ダーウィンはビーグル号では南太平洋の方を横断しましたので黒潮を見てはいませんが、そういうことはともかく、今ではダーウィンの頃(1830年代前半)だったらあり得ない漂流物が、海流が狭く急になるところでは散見されるわけです。そしてまた、海面で戯れるイルカを見れば、鯨類問題にも思いをはせることにもなります。

.. 以下、参考資料 ..
ダーウィンの文献に載っているサンゴ礁分布図:

さとふみによる参考ブログ記事..
http://blog.so-net.ne.jp/kozuchi/2007-03-15

参考の画像: チャールズ・ダーウィンがビーグル号で訪れたインド洋のココス(キーリング)諸島の一画..


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黒潮(その3;色について) [海と船]

黒潮(その3; 色について)

黒潮本流の海面の写真のひとつです。

種子島東沖の太平洋上

写真ではなかなか表現できない事柄のひとつとして対象の透明感ということをあげられると思うのですが、それは例えば水中で見る熱帯魚の透き通ったような感覚というのを出せる写真というのはあまり多くないように思えるんですね。自分で撮った場合魚の模様の色は出てるけれどもどうしても魚体の透明感がいまいちというわけです。
この海面の写真も同様で、海面の水の色は見えても波の微妙な角度に応じた光線の通り具合による透明感までは私の腕ではなかなか写せません。塗料などによる色ではないので、写真にも透明感が欲しいというわけです。

それはさておき、なぜ黒潮とよばれる海流の海面の色があのようになるのかについては、いまでは少し調べればある程度分かるわけで、光学に詳しいとは言えない私が改めてここで書かなくても良いのではないかと思いました。が、やはり自分なりに何かは書いて見ようということで以下の試みをしてみました。

問題の提起: 子どもに"きれいな海の色は何故青いの"と聞かれたと想定してみましょう。(注:きれいなという限定付きだということに注意してください。)

回答例A: "それは海が深いからだよ。"

回答例Aへのコメント: この答えで納得する子どもは多くはないでしょう。次には、
"なぜ海が深いと色が青くなるの"
という質問が出てくるかもしれません。これに対しては
"底が見えないから"
という答え方があるかも知れません。これで子どもは納得するでしょうか。ある程度までは納得してしまうかもしれませんが、もっと聞いてくるかもしれません。
"底が見えないとなぜ青いの"
と聞かれたら、どうしましょう。
"それは水の色が青だからだよ"
と答えたら、振り出しにもどったように見えます。でも、これで良いんです。水の色は青なんです。(注: すぐあとに説明します。)

回答例B:"空が青いからだよ"
回答例Bへのコメント: この答えは飛行機で1万1300メートルぐらいの高さのところを飛んでいる時に海面を見た時の答えとしてなら半分は正しいことを言ってますが、海面すぐの所から見た場合の海の色の説明としては正しくありません。高い所から見た海の色は海面からの光の一部を途中で空気(分子)が散乱しますので一種の空の色と言って良いものがはいることになり、本来の海の色とは異なった色に見えます。

回答例A(かなり正しい!)と回答例B(かなり間違っている!)との対比には"海の青""空の青"との原因の相違が含まれています。つまり、

a. 海の青い色は、水の分子というものが持っている太陽光スペクトル(虹で分かる)の赤い波長の光を吸収して見えなくしてしまうという性質、によります。
(注: 海の中では赤い色が見えにくくなります。)

b. 空の青い色は、大気中の分子が太陽光(スペクトル)の青い波長の光を散乱していろいろな角度の所から見えるようにするということによります。
(注: 散乱された青い光が空の色として目に届くわけです。日没時など太陽光線がより厚い大気層を通るような時には青い波長の光に近い方が途中でしっかり散乱されてしまった場合、太陽光として届くのは赤っぽい光になります。)

吸収と散乱という全く異なった原因が一見似たようなふたつの色の現象の根底にあります。(注: もっとも水の場合もただ吸収ということだけでは水の外から見た水の色の説明にはならず、水中からはね返してくる作用がなければ色としては見えません。これはまた別の機会にふれることになると思います。)

さて、上の説明、基本はとらえてあるつもりですが、突っ込みどころはあります。例えば、深い海でも緑色のもあるじゃないかといったようなことです。 これはもうちょっと複雑な事情を考えに入れないといけないようです。(注:水中に有機物が多いとその水は赤だけでなく青の領域の光も吸収してしまうということなどです。)

色の話は次回へ続きます。


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黒潮(その2;写真) [海と船]

黒潮域の海面の写真画像

DSC_1536.JPG

A
(黒潮本流域の境界付近: 2007年7月31日撮影)
1. トカラ海峡を東向きに進んだ黒潮本流は種子島沖の太平洋を、その境界で何本も大きな潮目を作って大海原を北向き(写真では上)に流れて行きます..

2. 別の潮目(こういうのが沢山あります)..

3. 図で青い点が上の写真(↑ )の撮影箇所..

注1: 海流推測図は海上保安庁のものによります;このページ下にリンクを書いてます。
注2: 測位はGPS受信によります。

gps.jpg



B
黒潮本流域:7月31日撮影
1.

2.

3.

4. 図で青い点が上の写真(↑ )の撮影場所..



C
1. 黒潮本流域から抜けた境界近く(北東に走る船の左舷側; 遠くに見えるのは陸地ではありません):

2. 図で青い点が上の写真(↑ )の撮影場所..



D
黒潮本流域からかなり外れた南側(水面が心なしか安定して、色調がやや明るい):7月31日撮影
1.

2. 図で青い点が上の写真(↑ )の撮影場所..



E
参考写真(黒潮域と異なる水域):
(熊野灘; 紀伊半島の東側沖合; 8月1日撮影)


参考: 7月31日の海流推測図(海上保安庁)のページです:
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/2007cal/cu0/qboc2007143cu0.html


タグ:黒潮 GPS 潮目
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黒潮(その1;概略) [海と船]



黒潮(その1;概略)

すでに8月ですが、この時期特に強い海流で、西日本の太平洋岸に暖かさ(暑さ)をもたらすをもたらすとも言える黒潮に注意を引かれます。

(黒潮海域を含む矩形; 画像には特に黒潮流路は書き込まれていません。)

黒潮とは、太平洋で赤道の北を西に流れる長大な北赤道海流と呼ばれる海流から続く強い海流で幅は100kmほどに及び、主にフィリピンのルソン島東から日本列島東岸までのものを指します。台湾の東で北向きから徐々に東向きに方向を変えつつ、石垣島西方から九州南岸のトカラ海峡を越えて、九州東岸から四国沖、紀伊半島沖を進み、そして時に大きく蛇行しながら伊豆、房総半島南岸をさらに東に進んで犬吠埼沖で東に日本列島からはなれ、その先は黒潮続流となり、さらに続いて北太平洋海流となって太平洋を東進して行くものです。
速度は時速で1.8km/hから10.8km/hに及ぶこともあるとされます。泳ごうとしても流される一方ですね。流れの深さは大体400m程のようですが、幅は100kmほどにも及ぶ事があると言われます。趨勢として南から北に向う流れですので、全体として水温は暖かめとなるようです。プランクトンが少なく、透明度が高いため海の色が青黒色を帯びます。

(北太平洋の海流と黒潮)

(海保のページから)

..等々、以上は予備知識として、以下はその現況です。

(7月26日の海況[海上保安庁]から特に黒潮の部分)

出所:
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/2007cal/cu0/qboc2007140cu0.html
および
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/2007cal/ocf/ocf200730.html

海洋情報部の急潮情報によれば..
"(2007年07月27日) 黒潮が、都井岬・足摺岬・室戸岬・石廊崎・御蔵島から大島南岸付近に接近しています"
となっています。
出所:
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/index.html

(黒潮海域の海面の写真は"その2"以降にアップします。)



補記: この黒潮沿い、沖縄から奄美地方の諸島伝いの、日本本土に渡る古代の"海上の道"という考え方が柳田国男氏によって示されたことがあります。しかし、黒潮沿いのそのような(南からの)経路による文化的影響というのは否定できないとしても、人間は例えばヤシの実とは異なるわけで、単なる漂流によって移動するわけではありません。本格的に移動目的で海に乗り出すときは、むしろ海流に逆らって出発するぐらいのほうが、もしものときに出発点にもどれるという安心感と安全確保があるはずで、黒潮のような強い海流に乗って移動する事が常態だったとは考えにくいと思うのですが、どうでしょうか。

関連記事バックナンバー:
http://blog.so-net.ne.jp/kozuchi/2007-04-07


タグ:黒潮
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高層の雲(平地はおだやか) [海と船]

高層の雲(平地はおだやか)

前回は台風前面に見える高層の雲(巻雲など)を見ました。ところで、陸にあがって数日、今朝家で空を見上げましたら、やはり高層に雲が出ていました。巻雲、巻層雲、巻積雲です。これは台風そのものの直接の影響ではなく(南の海上を西に進んでいる台風6号があり、また大気はつながっているので全く関連がないとは言い切れないわけでしょうが)、おそらく直接には上層のジェット気流のなんらかの乱れのためなのでしょう。この近くの平地は穏やかそうです。もっとも夕立ぐらいはあるかもしれませんが。

(8月6日 9時03分頃 京都市内)

(以下 9時30分頃)


(5日21時のジェット気流の様子)..

(6日9時のジェット気流の様子)..


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