SSブログ

ダーウィンの日記1832年8月29日 [ダーウィンが行く]

ダーウィンの日記(ラプラタ河以南への巡航)

[日記仮訳]

(1832年8月)29日

午前中は激しく雨が降った。だが、午後にはうねりが残ってはいたけれど何海里か岸をたどる事が出来た。夜、天候が思わしくなかったので外洋に出た。

去年のこの日、私が北ウェールズから家に着いた時、初めてこの航海の事を聞いたのであった。この一週間の間、私の状況と観点がその時と現在とでどれほど異なっているかをしばしば強く意識した。もしウェールズの山上で誰かが、君は1年後の今日にはパタゴニアの海岸の沖を間切っているだろうよとささやいたとしたら、その時の私の驚きを想像してみることは面白い。だが、今やこの事態は私にとってはあたりまえで自然な事のように思えるのだ。 [決定に至るまでの]苦痛に満ちた不確定の日々ほどくっきりとした印象を私の心に与えたものはない。とても細々(こまごま)とした詳細がまざまざと思い出されて、1年がずっと短い長さのように思える。でも、立ち止まって、月ごとに思いを巡らしてみると、時間はその中で起きた多くの事柄に比例するように増大する。


[天候]
1832年8月29日正午の天候:
変りやすい風、風力2、雲、全天曇り、暗い、雨、気温摂氏11.1度、水温摂氏11.4度。

[地図]
1832年8月29日正午のビーグル号の位置..

View Larger Map

[日記原文]
29th
The morning was thick with rain: but in the afternoon in spite of the remaining swell, some miles of the coast were traced. — at night the weather looked dirty & we have stood out to sea. —

This day last year, I arrived home from N. Wales & first heard of this Voyage. — During the week it has often struck me how different was my situation & views then to what they are at present: it is amusing to imagine my surprise, if anybody on the mountains of Wales had whispered to me, this day next year you will be beating off the coast of Patagonia: — And yet how common & natural an occurrence it now appears to me. — Nothing has made so vivid an impression on my mind as those days of painful uncertainty: the clearness with which I recollect the most minute particulars, gives to the period of an year the appearance of far shorter duration. — But if I pause & in my mind pass from month to month, the time fully grows proportional to the many things which have happened in it. —

[参考画像] 北ウェールズにあるコンウィ(Conwy)の近く (ビーグル号への申し出の手紙を受ける直前、ダーウィンはこの付近をセジウィック教授の助手として地質調査のために歩いた)..
5852780.jpg
出典: http://www.panoramio.com/photo/5852780


[参考地図] 北ウェールズ、コンウィ..

View Larger Map

["ダーウィンが行く"について]
このシリーズで扱っているのはダーウィンがビーグル号に乗っている時の日記です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。普通は全文を訳しますが日によっては原文全文と注釈または抄訳だけにとどめる場合もあります。抄訳の時はその旨を明示します。
[日記原典] "Charles Darwin's Beagle Diary" ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.

ダーウィンの日記全体の冒頭部はこのブログでは次のページにあります..
http://kozuchi.blog.so-net.ne.jp/2006-10-23


タグ:回想
nice!(25)  コメント(2) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 25

コメント 2

アヨアン・イゴカー

「間切る」(beat)と言う言葉は日本語でも英語でも初めて知りました。
by アヨアン・イゴカー (2008-08-16 19:47) 

さとふみ

これは、風上に進むという意味で言っていると思われます。
by さとふみ (2008-08-16 20:00) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。