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海、晦也 [あれこれ]

海、晦也


海、晦也。("釈名")
("海(かい)は晦(かい)なり。[海はくろい(くらい)のである。])"

"釈名(しゃくみょう)"という書物は後漢末から三国時代にかけての劉熙(りゅうき)という人の撰で、字典の古典です。漢字の形からの分析とは違って、字のあらわす語の語源を声訓(よみかた)によって探求する特徴のあるものです。これによると"海"というのは"晦(くらい)"が語源だという解釈がなされています。海の色が黒っぽいというのは分かりますが、それが本当に"海(カイ)"の語源かどうか。でも少なくとも"海"と"晦"とが同じ音を持っていた事は知る事が出来ます。
上の写真は夏に"黒潮"本流域で撮ったものです。日本近海でも黒潮域以外では海の色も少し異なるようですが、"黒い"とまで言えなくとも"晦い"とは表現出来るでしょう。

サンゴ礁のリーフの内側は、外洋とは異なって別世界で、太陽や見る人からの角度によっては明るいブルー(コバルトブルー、エメラルドブルー、等々)に見えますが、そのような領域は広大な大洋の中の極めて特殊な世界なんですね。

(ダーウィンによるサンゴ礁の分布図)

漢字の字典の古典中の古典である"説文解字"のほうは"釈名"より前に、後漢時代の許慎という人が、AD100年頃に著したものですが、こちらはどちらかというと漢字の形の分析に力点を置いています。もちろん読み方(音)も重要な役割を与えられてはいます。
それによると..

海、天池也。以納百川者。("説文解字")
"海は天池なり。もって百川をいれるもの。[海は自然の池である。それであらゆる川を受け入れるものである。]")

となっています。明かに海と川は異なった存在として認識されていますが、こういう極めて古い文献にはあまり真水と鹹水(塩水)の区別が明示されているのを私は見ていません。別の文献では、各地の土壌について述べるところで、ある地域では塩気のある土があるというように書いてあるのがあります。
"説文解字"の上の説明、確かに簡潔に要点をおさえてはいますが、当時の知識からはやむをえないのでしょうが、大洋の広大さをあらわせていないように思います。"説文解字"が書かれたのは、このブログの先の方で触れた海洋民族としてのポリネシア人の祖先と考えられるラピタ人が太平洋を東に向い、広い範囲に散在する島々に植民を行っていた時期ですが、一方で大陸の漢人には海の実際というものを知る機会がほとんどなかったのだろうと思います。
もっとも、漢人の世界観としては通常住んでいる世界はぐるりと海に取り囲まれているという考え方を持っていたようなのですが、それは想像の産物なのか、実際的な知識だったのかよく調べないとわからないと思います。ただ、少なくとも西方に海があることは、当時陸のシルクロードによってローマと交流がありましたから分かっていたわけです。その西方の海が東方の海と実はつながっていて、ぐるっと諸大陸を囲んでいるという事については当時は想像するしかなかったのではないでしょうか。


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