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ダーウィンの日記1832年8月15日から18日まで [ダーウィンが行く]

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ダーウィンの日記(モンテビデオ)

[日記仮訳]

(1832年8月)15日

ボートでマウントに上陸した時、大きなヤギ[cabra]またはカピバラ[capincha][注]が岩の上にいるので驚いた。小さな湾での活気づいた長い追跡の後、その頭を弾丸1個で撃つことが出来た。これらの動物はオリノコ河と関連づけられているがこの辺でも珍しいというわけではない。だが、その用心深さと飛び込んで泳ぐ能力のゆえに捕まえるのは困難である。体格においてテンジクネズミに似ている。習性においてはミズハタネズミに似る。重さは98ポンド[トロイポンド;36.58kg]あった。
[注] ここで"ヤギまたはカピバラ(Cabra or Capincha)"と書いてます。明らかにカピバラのことを言っていると思われます。カピバラの意味の"capincha"もヤギの意味の"cabra"もスペイン語の単語なのでダーウィンのよく知る語彙のうちにはなかったと考えられます。まだ見慣れない動物で、その日のうちに日記を書くのによく調べる時間がない場合は時にこういう風に名前があいまいな事例もあるのでしょう。
自分の収穫[カピバラ]を意気揚々として船に送ってから私は数多くの色々な動物を採集した。何匹かの美しいヘビ、トカゲ、甲虫たちである。石の下には沢山の2インチ[5.08cm]ほどの長さのサソリがいた。杖で地面に押し付けられるとそれらははっきりと音が聞こえるほどの力をもって針でそれを突刺した。

ドルイド号は、ブエノス・アイレスの政府から、私たちに向かってなされた侮辱[注]に対する長い弁明を持ち帰った。監視船の船長は直ちに逮捕され、彼が職務を続けられるかどうかは英国の領事の選択に委ねられた。
[注]8月2日のブエノス・アイレスでの監視船からの発砲事件のこと。

16日
今日は昨日の労働の豊富な成果を調べて過ごした。
ビーグル号は明後日に最初の巡航のために外洋に出る[注]
[注] 実際の出発は19日になります。これによりビーグル号のこの航海での本格的ミッションが始動するわけです。そしてダーウィンの多くの発見はこの先にあります。

17日
まる一昼夜南からの強い風が吹いた。何度もの雹(ひょう)を伴う嵐があり、それは私たちの凍った海への最初の紹介である。河では波が[勢いにおいて]増大し、水深が浅いことにより波が泥を含んでまるで泥の山々のように見える。この風に対して船首を向けての乗り心地というものは私の胃の腑のまさに根底部分を揺さぶるものだ。

18日
多くの士官が岸にいてまだこちらに来る事が出来ないでいる。しかし艦長は測量観測のために敢てラット島まで帆走した。ホウェール・ボート[注]が海面で跳躍するところを見るのは見事なものだった。帰りには彼はその帆の帆桁をとりはらったのだった。
[注] ビーグル号に搭載していたボートのひとつ。

[注釈] この翌日19日に、ビーグル号はここより南方の海岸測量のために出帆します。

[画像]ダーウィンが"マウント"と呼んでいる丘の遠景..
19r.jpg
C.Martens. 1833.09.

[天候]
1832年8月17日正午の天候:
南西の風、風力5、青空と雲、スコール、気温華氏47度(摂氏8.3度)。

8月18日正午の天候:
南南西の風、風力5、青空と雲、スコール、気温華氏46度(摂氏7.8度)。

[地図]モンテビデオのあるラプラタ河口(少し上流にブエノス・アイレス)..

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[日記原文]
15th
As the boat was landing me at the Mount, we surprised a large Cabra or Capincha on the rocks. After a long & animated chace in a little bay, I succeeded in shooting it through the head with a ball. — These animals abound in the Orinoco & are not uncommon here, but from their shyness & powers of swimming & diving are difficult to be obtained. — It is like in its structure a large guinea-pig: in its habits a water rat. — it weighed 98 pounds. — Having sent my game on board in triumph, I collected great numbers of different animals: some beautiful snakes & lizards & beetles. Under stones were several scorpions about 2 inches long; when pressed with by a stick to the ground, they struck it with their stings with such force as very distinctly to be heard. —

The Druid has returned from Buenos Ayres & brought from the its government a long apology for the insult offered to us. — The Captain of the Guard-ship was immediately arrested & it was left to the British consuls choice whether he should any longer retain his commission. —

16th
Spent the day in examining the rich produce of yesterdays labor. — The Beagle goes to sea the day after tomorrow for her first cruize. —

17th
All day & night it has blown a stiff breeze from the South. There have been several hail-storms, which forms our first introduction to frozen water. — A sea soon gets up in the river & from its little depth the waves become so muddy that they look like mountains of mud. — This riding with our head to wind shakes the very foundation of my stomach. —

18th
Several officers are on shore & cannot yet come off. — The Captain however has ventured to sail to Rat Island to obtain sights. It was beautiful to see how the whale-boat hops over the sea. — In returning he carried away the yard of his sail. —

["ダーウィンが行く"について]
このシリーズで扱っているのはダーウィンがビーグル号に乗っている時の日記です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。普通は全文を訳しますが日によっては原文全文と注釈または抄訳だけにとどめる場合もあります。抄訳の時はその旨を明示します。
[日記原典]
"Charles Darwin's Beagle Diary" ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.

ダーウィンの日記全体の冒頭部はこのブログでは次のページにあります..
http://kozuchi.blog.so-net.ne.jp/2006-10-23


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アヨアン・イゴカー

>In returning he carried away the yard of his sail. —
この部分こんな意味でしょうか?

捕鯨船が波の上を跳ねるように進んでゆくような天候。風力5で海面にも幾つもの波頭が立っていたのでしょうか。その結果、敢えてラット島まで帆走したために、帆桁がへし折られ、ラット島から戻ってきて、船長がそれを片付けたのでしょうか?
by アヨアン・イゴカー (2008-08-09 22:07) 

さとふみ

この部分の意味なかなかとりにくかったので色々試行錯誤しましたが、次のように理解しました..
この日正午で南南西の風、風力5ですから、それほど強い風というわけではありませんが、ラット島からビーグル号に帰るのは逆風気味になります。ダーウィンの描写によれば波は高かったのでしょう。それで、ラット島からの帰りには艦長はボート(ホウェール・ボートというタイプ)での帆走をやめて、オールに切り替えて帆桁は取り外してしまった(carried away)、ということだと思います。
by さとふみ (2008-08-09 22:23) 

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