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ダーウィンの日記1832年7月21日と22日 [ダーウィンが行く]

ダーウィンの日記(リオからモンテビデオへ)

[日記仮訳]

(1832年7月)21日

今日の天候はちょうど英国の秋の日のように感じた。夕方になって風が強まり濃い霧が出て来た。こういった事はプラタ河の近傍では頻繁な事なのだが、私たちはその河口から50海里しか離れていないのである。夜は嵐含みで突風が吹いた。私たちはペンギンやアザラシに取り囲まれた。それらが奇妙な声を出したので、深夜からの当直のチャッファーズ氏[航海長]が報告のために[見張りの甲板から]降りてゆきウィッカム氏[副長]に岸で牛がモーと鳴いているのが聞こえると言ったのであった。

日曜日 22日

今朝、ラ・プラタ河の天候の真の標本とも言えるものを経験した。雷光がとても強くて、激しい雨と突風を伴っていた。日中とても寒くて湿っぽく冷えた。私たちは色々な海鳥の大きな群れを通り過ぎた。さらに、いくらかの昆虫とキアオジ[Yellowhammer]にとても良く似た鳥が船上に飛んで来た。

私たちはサンタ・マリア岬から50海里のところにいる。私はちょうどデッキに出ていたところだ。この夜、とても壮観だ。空の暗闇は最もくっきりした雷光のために中断される。セント・エルモの火。マストの先端と高い帆桁の両端がその周辺にある電流によって照らされるのであるが、羽根状の形はあたかもリンで擦ったかのように跡づけられそうである。これらの天然の花火を完成するかのように、海がとても光っていてペンギンをその通った波跡によって追跡出来そうでさえある。夜は嵐含みのようで、スコール状の強い雨と風があったので、私たちは投錨した。

[注釈]
1832年7月21日正午の天候:
風力2、青空と雲、霧、気温摂氏16.4度。

22日正午の天候:
変わりやすい風、風力4、雲、曇り、暗い、(継続的)雨、気温摂氏14.4度、水温摂氏13.6度。

[地図]1832年7月22日正午のビーグル号の位置..

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[参考画像]セント・エルモの火..
stelmofire.jpg
"St. Elmo's Fire on Mast of Ship at Sea" in "The Aerial World," by Dr. G. Hartwig, London, 1886. P. 310. Library Call Number QC863.4 H33 1886. 出典: http://www.photolib.noaa.gov/htmls/libr0525.htm

[日記原文]
21st
The weather to day felt just like an Autumnal day in England. — In the evening the wind freshened & a thick fog came on. — These are very frequent in the neighbourhead of the Plata, & we are only now about 50 miles from the Mouth. — The night was dirty & squally: we were surrounded by Penguins & Seals which made such odd noises that in the middle watch Mr Chaffers went below to report to Mr Wickham that he heard cattle lowing on shore. —

Sunday 22nd
We have had this morning a true specimen of the Plata weather. — The lightning was most vivid, accompanied by heavy rain & gusts of wind. — The day has been exceedingly cold & raw. — We passed through large flocks of different sea-birds. — and some insects & a bird very like a yellow hammer flew on board. — We are about 50 miles from Cape St Marys. — I have just been on deck, — the night presents a most extraordinary spectacle. — the darkness of the sky is interrupted by the most vivid lightning. — St. Elmo's fire. The tops of our masts & higher yards ends shone with the Electric fluid playing about them, — the form of the vane might almost be traced as if it had been rubbed with phosphorus. — To complete these natural fire-works. — the sea was so highly luminous that the Penguins might be tracked by the stream of light in their wake. — As the night looked dirty & there were heavy showers squalls of rain & wind, we have dropped our anchor. —

["ダーウィンが行く"について]
このシリーズで扱っているのはダーウィンがビーグル号に乗っている時の日記です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。普通は全文を訳しますが日によっては原文全文と注釈または抄訳だけにとどめる場合もあります。抄訳の時はその旨を明示します。
[日記原典]
"Charles Darwin's Beagle Diary" ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.

ダーウィンの日記の冒頭部はブログでは次のページにあります.. http://kozuchi.blog.so-net.ne.jp/2006-10-23


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アヨアン・イゴカー

>セント・エルモの灯。
『ビーグル号航海記』は大学生時代に読み、大変感銘を受けたのですが、
セント・エルモの灯についての記述があったことは、全く覚えていませんでした。尤も、殆ど忘れてしまっていますが。
by アヨアン・イゴカー (2008-07-21 11:03) 

さとふみ

セント・エルモの灯についての言及は確かに『航海記』にもありますが、『日記』と『航海記』は全く別の書籍ですので、『日記』に書いてあって『航海記』には書いてない事柄(またはその逆)があるのは普通の事です。
by さとふみ (2008-07-21 12:42) 

リックディアス

セントエルモの灯。
不思議な現象ということで、聞いたことがありました。

by リックディアス (2008-07-21 21:54) 

旅爺さん

セント・エルモの火は小さい頃から興味を持っていますが見たことありません。 マストの上だけでなく他でも見られる事はあるんでしょうか?。
by 旅爺さん (2008-07-22 12:10) 

春分

セントエルモの火はステラーの航海にも出てきてましたが書かずにおきました。
私の紹介はいい加減な内容なのでいろいろ端折ってます。
by 春分 (2008-07-26 15:57) 

さとふみ

旅爺さん..
セント・エルモの火は私も見た事はありません。煙突とか飛行機の翼にも見られる時があると聞きますが、見てないので分かりません。
by さとふみ (2008-07-27 07:47) 

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