ダーウィンの日記1832年6月29日

ダーウィンの日記(リオ・デ・ジャネイロ)

[日記仮訳]
(1832年6月)29日
来週の火曜日に外洋に出ることになっている。そのゆえにボトフォゴでの採集を完成するための短い時間があるというわけだ。

昨夜、郵便船により、選挙制度改革に関する少数派アール・グレイについての重要ニュースがもたらされた[注]。最新の情報は5月20日のものだ。成り行きからの時間と空間における距離というものが政治や新聞への鋭い関心というものを減じさせている。
[注]当時英国では選挙制度改革が極めて重要な問題として議会を中心に争われており、この年1832年5月初めの改革法案の議会通過が不首尾であったことにより、5月9日には議会の少数派ウィッグ党から出ていた改革派の首相アール・グレイが辞任する事態となっていました。ところが議会外での強い抗議行動もあり、5月15日にはアール・グレイが再び内閣を形成するように呼び戻されるということになっていました。ダーウィンが受け取ったのはその辺の知らせだと思われます。ダーウィンはウィッグ党支持者でした。

[日記原文]
29th
We go to sea on next Tuesday, so that I have a nice short time for finishing the collections I made at Botofogo.
The very interesting & important news of the minority of Earl Grey on the reform was brought late last night by the Packet. — The latest information is 20th of May. — The distance of time & space from the events takes from me the keen interest for Politicks[sic] & Newspapers. —


["ダーウィンが行く"について]
このシリーズで扱っているのはダーウィンがビーグル号に乗っている時の日記です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。普通は全文を訳しますが日によっては原文全文と注釈または抄訳だけにとどめる場合もあります。抄訳の時はその旨を明示します。
[日記原典]
"Charles Darwin's Beagle Diary" ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.