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ダーウィンの日記1832年1月31日と2月1日 [ダーウィンが行く]

ダーウィンの日記(ベルデ岬諸島サンティアゴ)

[仮訳]
(1832年1月)31日
今朝、視界が良好だった。 大気はことのほか澄んでいた。 山々は濃い青または黒い雲の前にくっきりとしていた。 その様子から見て、私は空気が湿気で飽和しているのだと思っていた。 [ところが]湿度計はその反対のことを示した: 気温と露点との差が[華氏で]29.6度を指していて、これは他の日の朝に見られるもののほぼ2倍ということになる: 20日および21日はそれは15.5であった。[今朝31日の場合は華氏]42.2度[摂氏5.67度]が露点で、気温は[華氏]71.8度[摂氏22.1度]であった。前日[30日]は[気温と露点温度の]差がわずか8.8度であり、露点温度が[華氏]64.4度[摂氏18度]であった。[*注]
この大気の通常ならざる乾燥はたてつづけの雷光を伴っていて、これは、私が想像するに、尋常ならざる湿り気からこのような極端な乾燥への大きな変化の結果なのだろうと思う。

[*注]周知のとおり "露点温度(ろてんおんど)"は、空気を冷却していった時、その空気中の水蒸気の凝結が始まる温度のことです。露点温度がその時の気温よりかなり低いということは空気が乾燥していることを意味します。ダーウィンの日記において、31日朝の気温が華氏71.8度(摂氏22.1度)であり、露点温度が華氏42.2度(摂氏5.67度)ということですが、この場合、たとえば下記の計算プログラム(↓)によりますと、

http://www010.upp.so-net.ne.jp/catwalk/humid/

相対湿度は34.36%となり、かなり乾燥しているということになります。
これに対しその前日には、ダーウィンの記述から、摂氏表示に換算して気温が摂氏22.9度で露点温度が摂氏18度あったということになりますので、相対湿度は73.91%だったということになります。30日から31日にかけて乾燥大気への急な入れ替えがあったということになります。

[参考画像]温度計と露点温度計

画像出典 http://www.okinawa-jma.go.jp/nakou/airport_kansoku/kansokukomoku/ondo_roten/ondo_roten.htm

[参考] 『ビーグル号航海記(邦題)』(1845年)の関連部分..
"ある朝、景色は不思議なほど透明であった。遠方の山々は、濃青色の雲の密集した堆積の上に、極めて鋭い輪郭をして浮き上がっていた。その有様をイギリスで見た同様の状態から判断して、空気中に湿気が飽和していると思った。ところが事実は全く反対であることがわかった。" 島地威雄訳『ビーグル号航海記』上、岩波文庫、1959年。

[仮訳(続)]
2月1日
この日はすべて、私は昨日の収穫を顕微鏡で熱心に調べていた。

[注釈2]
1832年1月31日正午のプラヤ港での天候:
北東の風、風力2、雲を伴う青空、気温華氏80度(摂氏26.67度)、水温華氏72度(摂氏22.22度)。

2月1日正午のプラヤ港での天候:
北北東の風、風力5、雲を伴う青空、スコール、気温華氏79度(摂氏26.11度)、水温華氏72度(摂氏22.22度)。

[参考]プラヤ港の現在の天候 http://www.worldtimeserver.com/weather_in_CV.aspx?forecastid=CVXX

[日記原文]
31st
This morning the view was very fine. — the air being singularly clear. — & the mountains were projected against dark blue or black clouds. — Judging from their appearances I should have thought the air was saturated with moisture. — The Hygrometer proved the contrary, the diff: between Temp & Dew point being 29.6: this is nearly double what it has been any other morning: on the 20th& 21st it was 15.5. — The dew formed at 42.2 & atmosphere was 71.8. — On the previous morning the diff was only 8.8: & dew point 64,4. — This uncommon dryness of the air was accompanied by continued flashes of lightning. — consequent I suppose on the great change from unusual dampness to such extreme dryness. —

The whole of this day I have been working very hard with microscope at yesterdays produce.

February 1st
Busy with my usual employment viz marine animals.



["ダーウィンが行く"について]
このブログのシリーズで扱っているのはダーウィンのビーグル号に乗っている時の日記です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。ここでは全文を訳してますが、日によっては原文全文と注釈または抄訳だけにとどめる場合もあります。抄訳の時はその旨を明示します。
[日記原典]
"Charles Darwin's Beagle Diary" ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.


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