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ダーウィンの日記1832年1月24日 [ダーウィンが行く]

ダーウィンの日記(ベルデ岬諸島のサンティアゴ)

[仮訳]
(1832年1月)24日
[午後]1時の食事の後、ウィッカム、艦長そして私は、有名なバオバブの木まで歩いて行って、それをもっときちんと測った。フィッツロイ艦長はまず携帯用の六分儀で角度を測った[角度から高さを測った]後、木に登って糸を垂らした。両方[の方法]で同じ結果、つまり高さ45フィート[13.716m]だった。 地上からの高さ2フィート[60.96cm]のところで(そこでは張り出した根がない)のその周囲は35[フィート; 10.668m]だった。その形は長円形で、その最大の見える所の直径は13フィート[3.96m]だった。ゆえに、正確に描画しようと思えば、幅と高さの比は3.4となるだろう。フィッツロイ艦長はその比率のよい概念を与えるスケッチをしたが、しかしそれにおいては高さは幅のわずかに2.4倍だった。これは頻繁に見られる事だが、自然の忠実な描写というものがその正確な概念を与えていないということを証明している。
私たちは、楽しく愉快な散歩の後、丁度暗くなる頃帰り着いた。

[注釈]
フィッツロイ艦長の測量家としての側面を示すエピソードです。また、機器による計測では精確な慣れた人でも、目測による直感では誤差を免れないことをここでダーウィンも再認識したようです。
ところで、ダーウィンは自叙伝で認めているように素描が下手で、ビーグル号関連のスケッチはほとんどがダーウィン以外の人が描いたものです、そのなかで、途中から乗船した画家コンラッド・マーテンス(Conrad Martens)のスケッチはこのブログでも適切な時期に見る機会があると思います。他にはビーグル号の士官のスケッチもいくつかあります。先に掲げたビーグル号の操舵輪のスケッチはダーウィンが乗った当時士官候補生だったフィリップ・ギドレイ・キング(Philip Gidley King)のものです..
操舵輪のスケッチのあるページ.. http://blog.so-net.ne.jp/kozuchi/2007-12-22-3

[画像1]
ベルデ岬諸島のバオバブの木(1873年)

画像出典.. http://piclib.nhm.ac.uk/piclib/www/comp.php?img=88255&frm=med&search=tree

[仮訳(続)]
この朝、とてもきれいなスクーナー[2本以上のマストを持つ縱帆の帆船]が来た: それは偽装された奴隷船だと強く疑われる。その船が言うには、それはアフリカ海岸の一般の貿易船だということだ。艦長は午前中にその船を徹底的に調査することを企図し、そしてその船がなんであるか判明する。私はすべてがうまく隠されているのだと思う。さもなくばその船は[海軍に就役中の船を表示する]ペナント旗が掲げられている港に入って来ようとはしないだろう。

[注釈1] 当時[1807年の奴隷貿易廃止後]英国海軍は基本的に奴隷船を取り締まる方針でいました。ここでダーウィンは経過を詳しくは書いていませんが、私が推測するに、英国艦船であるビーグル号側からその疑惑の船に立ち入り調査をする旨伝えた段階で、実際に立ち入る前に、その船が立ち去ったのではないかと思われます。ビーグル号の本来の任務は測量なので、ここで深追いはしなかったのだと想像できます。なお、なぜかダーウィンはこの日の日記のこの部分だけ現在時制の文章を多くして書いています。

[画像2]
英国海軍の就役ペナント旗

[注釈2]
1月24日正午 プラヤ港での天候:
北東の風、風力5、雲を伴う青空とスコール、気温華氏76度(摂氏24.44度)、水温華氏71.5度(摂氏21.94度)

[地図] 1832年1月17日から2月7日までビーグル号はベルデ岬諸島サンティアゴ島南端のプラヤ(Praia)港のある湾に停泊します:

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[原文]
24th
After our one oclock dinner, Wickham, the Captain & myself walked to the famous Baobob tree & measured it more accurately.- Cap FitzRoy first took an angle by a pocket sextant & afterward climbed the tree & let down a string, both ways gave the same result, viz. 45 feet in height. — Its circumference measured 2 feet from the grounds (there being no projecting roots) gave 35. — Its form is oval, & its greatest visible diameter was 13 feet. — So that in an accurate drawing its breadth height would be 3.4 of its height breadth. — Cap FitzRoy made a sketch which gave a good idea of its proportion, yet in this the height was only about 2.4 of breadth. Proving, what one so often observes, that a faithful delineation of Nature does not give an accurate idea of it.- We returned home, after our merry & pleasant walk, just as it was dark. — :

A very pretty schooner came in this morning: it is strongly suspected that she is a slaver in disguise, she says she is a general trader to the coast of Africa. — The Captain means to overhaul her in the morning & make out what she is. — I suppose every thing is well concealed, else she would not have come into a harbour where a pennant was flying.

["ダーウィンが行く"について]
このブログのシリーズで扱っているのはダーウィンのビーグル号に乗っている時の日記です。訳文は私的な研究目的に供するだけの仮のものです。ここでは全文を訳していますが、日によっては原文全文と注釈または抄訳だけにとどめて必ずしも全文の訳をしないこともあります。抄訳の時はその旨を明示します。
[日記原典]
"Charles Darwin's Beagle Diary" ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.





現在のベルデ岬諸島のバオバブの木のひとつ


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