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ダーウィンの日記1831年12月13日 [ダーウィンが行く]

ダーウィンの日記

[注釈]
12月13日はこの日ダーウィンがプリマス港で待機中のビーグル号の艦長室ではじめてフィッツロイ艦長とともに食事をしたこと以外は特筆する事はなかったようです。ただし、ダーウィンはこれからの自分のするべき事について気持ちを引き締めているようです。 

[仮訳]
(1831年)12月13日

暇な1日; 初めて艦長室で食事をし、すっかりくつろいだ気持ちになった。
ともに食事することほど、艦長が私に与えたものの中で最も重要なものは他にないだろう[注1]

自分が手がけなければならない題材の多さに圧倒されるのではないかと私はしばしば恐れる。どの計画も目星をつけることは困難で、船上において方法論がなければほとんど何もできないことは確かだ。
主な目標はまず収集と観察そして私がどうにかして扱える博物学[注:natural history;自然史学とも言う]のすべての分野について読書することだ。気象学上の観測も。
フランス語とスペイン語、数学、それと若干の古典、おそらく日曜日のギリシャ語聖書以上のものではないと思うが。私は一般に上述の分野以外の英語の書物を1冊娯楽用に手もとに置きたいと望む。
私がもし航海の間絶えず勤勉であるようにエネルギーを保っていなかったら私自身を向上させる機会を捨て去ることなんと尋常ならざるものとなることだろうか。
このことが一時でも念頭から離れることのないように、そして私がケンブリッジにいた時には投げ捨てていた自分の心を磨くというその機会を保てますように[注2]

[注1] 艦長室は船尾にあり、常にというわけではありませんが順風で帆走しているときは風上に位置しました。ダーウィンの居所は艦長室のある階(つまり主要なデッキ)の1階上の船尾に突き出したPoop Cabinと呼ばれる船室内でした。そこには大きな製図用の机があり(ビーグル号は海図作成の任にありました)、ダーウィンに割り当てられた椅子はその机に対して左舷側にあったことが分かっています。
[注2] ダーウィンはこのとき22歳でした。

[原文]
December 13th

An idle day; dined for the first time in Captains cabin & felt quite at home. — Of all the luxuries the Captain has given me, none will be so essential as that of having my meals with him. — I am often afraid I shall be quite overwhelmed with the numbers of subjects which I ought to take into hand. It is difficult to mark out any plan & without method on ship-board I am sure little will be done. — The principal objects are 1st collecting observing & reading in all branches of natural history that I possibly can manage. Observations in Meteorology. — French & Spanish, Mathematics, & a little Classics, perhaps not more than Greek Testament on Sundays. I hope generally to have some one English book in hand for my amusement, exclusive of the above mentioned branches.- If I have not energy enough to make myself steadily industrious during the voyage, how great & uncommon an opportunity of improving myself shall I throw away.- May this never for one moment escape my mind, & then perhaps I may have the same opportunity of drilling my mind that I threw away whilst at Cambridge.-

[資料]
"フィッツ・ロイの性格は特異であったが、そのなかには非常に高尚なものがいろいろあった。かれは、自分の義務にたいして献身的であり、過失には寛大であり、大胆であり、決断力をもち、不屈な活動力があり、部下の誰にとっても情の深い友人であった。かれは、援助するに値すると思う人たちを助けるためには、どんなめんどうでもみてやった。かれは容姿がすぐれ、いとも礼儀正しいものごしで、これこそ紳士と思われるような人であった。.."
(『ダーウィン自伝』、八杉龍一、江上生子訳、筑摩書房、1972、第3章.)

(フィッツロイ艦長)



["ダーウィンが行く"について]
このブログのシリーズで扱っているのはダーウィンのビーグル号に乗っている時の日記です。私的な研究目的に供するだけの仮の訳文です。

[日記原典]
"Charles Darwin's Beagle Diary" ed. by R.D.Keynes, Cambridge U.P., 1988.


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