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1769年6月3日 [海と船]

1769年6月3日

キャプテン・クック(Captain James Cook)は1768年7月30日付けの極秘の訓令を受けます。

"われらは、国王の御命令に従い、貴官を司令官に任じた陛下の三檣帆船エンデヴァ号が、1769年6月3日太陽円盤上の遊星ヴィナス通過を観測するのに王立協会がもっとも適したと判断する人材を受け入れ、その人々を右の現象を観測するに適切な赤道の南の地方に派遣するため、同船にふさわしい装備をなさしめた。..

"貴官(注:キャプテン・クック)は、原住民との友情を開拓するため、あらゆる適切な手段をつくして努力すること。そのため相手が受け入れることのできる小さな品々を提供し、糧食と交換すること。貴官が供給されるよう指示された商品は、彼らが貴重視する種類のものであり、彼らにたいしては、できうるかぎりていねい親切に対応せよ。ウォリス船長によれば、同島はきわめて人口多く、原住民はやや信頼のおけないところがあるので、彼らから不意討ちを受けないよう用心し、いかなる偶発事にたいしてもつねに警戒心を失ってはならない。

"貴官に与えられた任務が許すかぎり、さらに測量をおこなって地図を製作し、島や港湾の景観を観察せよ。これは将来の航海に有用であり、従来得られたものに比して完成度の高い観念と記述をわれわれに与えることが必要と貴官が判断したところにしたがって実行すべきである。..

"この任務が完了したとき、貴官は時を移さず出帆し、封印された同封の封筒にある追加の訓令を実行せよ。"(クック,「太平洋探検 上」、岩波書店)

これは、1769年6月3日の金星の太陽面通過をタヒチで観測する航海に出るようにとの命令の抜粋です。

(1769年6月3日タヒチ島現地時刻午前11時56分の太陽と金星の位置の模型)

この結果、キャプテン・クックは石炭運搬船だったエンデヴァ号で第1回目の世界周航に出かける事になります。観測が行われたのは、タヒチ島の、現在でもヴィーナス・ポイントと呼ばれる地点です(下図の黄点)。ここにたどり着くまでエンデヴァ号は大西洋から南米大陸および附属する島の南端のドレイク海峡を通って太平洋に出ています。

実際の観測は、器具の精度に問題があってあまり有意義な成果はあげられなかったようです。

この観測任務の後、キャプテン・クックは第2番目の極秘命令書を開封する事により、南方の新大陸探検のための航海に移る事になり、ニュージーランドの北島と南島の間にある海峡の発見や、オーストラリア大陸東岸への到達といった業績を残す事になります。

(追加の訓令については次回に..)

(英国海軍本部)

(参考画像: 2004年6月の金星太陽面通過の写真 Jeff Ball撮影)


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コメント 5

neko-san

今、まんが中国の歴史(小学生用)に続き、
まんが世界の歴史(小学生用)を読んでいる最中です。
まさに、キャプテンクックが、載ってたりするわけで、
これまた、タイムリーでございます(笑
by neko-san (2007-06-03 21:22) 

さとふみ

キャプテン・クックのことも面白いのですが、現代的には、大英帝国やその他ヨーロッパの当時の視点だけでは一面的になりやすく、オーストラリアの先住民などの立場もどうしても考慮しなければならない側面もあります。でもそれはそれとして、興味深い話は取り上げてみたいと思います。
by さとふみ (2007-06-03 22:43) 

RangerMaeda

勉強になります^^
地形図のくもの形がかわいい^^
by RangerMaeda (2007-06-04 15:13) 

さとふみ

クック自身の書いたものが面白いです。
by さとふみ (2007-06-04 16:52) 

実在の人物だったのか。
by (2007-06-04 20:32) 

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