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船を数える [あれこれ]

船を数える

船を数える助数詞として '艘'とか'艇'という語ももちろんありますが、普通はやはり'(セキ)'という語が使われると思います。

この漢字、康熙字典の部首では8画の

("ふるとり" 音はスイ)
の項に分類されているわけですが、その部首のスイという字は 尾の短い鳥一般 を指すとのことです。
で、漢字

の方は、鳥を意味する

と、手を意味する

との合字で、一羽の鳥を片手に持つ様子をあらわしていて、結局、鳥一羽ということを表現する会意文字だということなんですね("説文解字")。

この字が助数詞としては、羊などの動物や車、そして船を数えるのに使われているというわけです。玉(ぎょく)を数える用例は"穆天子伝"という成立年代のよく知られていない古い文献(西晋時代つまり3世紀後半以後に発掘されて出て来た文献で書かれた時代が不明)にあるようですし、羊を数える例は北宋の時代に編集された"(新)唐書"にあるようです。

さて、問題の船を数える助数詞としての用例を見るために、諸橋轍次著の"大漢和辞典"を開いてみますと、唐代の詩を清の時代に集めて出来た"全唐詩"のなかの中唐時期(8世紀半ば~)の姚合という人による秋晚江次という題の五言律詩に"風湾一隻船"という句があるということが分かります。(注:これは"全唐詩"の中を検索すれば出てきますので確認出来ます。)

まあ、少なくとも唐代以来使われているということですから、かなり古い歴史を持った助数詞として考えられるということでしょうか。

一方、'艘(ソウ)'のほうですが、

これは意味をあらわす '舟' の字

に、音符としての漢字 '叟(ソウ)'

を合わせた形声文字で、船の総名、あるいは総称として使われるものとされます("説文解字")。船を数える助数詞としての用例は"呉志"("三国志"の一部)の中に出て来ますので、これもずいぶんと昔からの用法のようです。

それから'艇(テイ)'

のほうは小舟をあらわす漢字で、古い時代の用法では1人か2人が乗る程度の縦長のものだとのことです("釈名")。(注: 短小な舟をあらわす '艀(フ)' という文字が別にあるわけですが、現在日本ではこの字は"はしけ"という意味でつかわれるようです。)

注: 1853年(嘉永6年)6月のペリーの率いる黒船来航の後、"泰平の眠りをさます上喜撰(蒸気船) たつた四杯で夜も眠れず" という狂歌が出来たらしいですが、これは船を '杯' で数える習慣があることをも意味しています。この数え方は今はあまり一般的ではないでしょう。


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