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遭難と脱出(キャプテン・クック 1770年) [海と船]

キャプテン・クックの遭難と脱出

キャプテン・クックはなんと言っても偉大な航海家ですが、1770年6月11日、オーストラリアの北東岸、グレート・バリアリーフにおいて座礁し、困難の末やっと脱出するという経験をしています。

Cape Tribulation



(キャプテン・クックの苦心したトリビュレーション岬または"苦難岬";座礁地点は岬より北方にある岩礁)

"6月11日 月曜日
風は西南西で、それに乗ってわれわれは、岸から3、4リーグ(注:ほぼ16.7kmから22.2km)の距離をおき、14、10、12尋(注:それぞれ約25m、18m、21.6m)の水深のところを岸に沿って進んでいった。..(中略).. 6時から9時近くまで、船を進めていくと、深度は14から16尋(注:25mから28.8m)に深まったが、やがて急に12、10、そして8尋(注:21.6m、18m、そして14.4m)に落ちこんだ。そのとき私は部署についたすべての者たちに、上手回し(注:風に対してジグザグに進む)をし投錨する準備をさせたが、しかしこれはあまりよい結果にならなかった。というのは、また深いところにきたのでもう危険はないと思い、私は進路をそのままたもったのである。10時になる前、水深は20および21尋(注:36mおよび37.8m)であり、そのままの深さがつづいた。11時数分前に、17尋(注:30.6m)の深さであったが、測深をしていた者が次に測鉛を投げこむ以前に、船は座礁して動かなくなった。そこですぐにすべての帆をたたみ、ボートをおろして船の周囲の測深をおこなったところ、船はサンゴ礁の南東の端にぶつかって、船のまわりのある箇所では3、4尋(注:5.4m、7.2m)の水深しかなかった。他の場所ではそれほどの深ささえなかった。そして船からちょうど船の長さほど右舷にむかっては(船は北東に船首をむけていた)8、10、および12尋(14.4m、18m、および21.6m)の水深であった。(クック、「太平洋探検 上」岩波書店)

この後、キャプテン・クックは、銃、鉄器類、石のバラスト、樽、帆環、樽板、油壺、くさった補給品等々を海に投げ込んで船体を軽くし、高潮を利用してサンゴ礁から離脱を試みますが、すぐにはうまくいかず、考えつくあらゆる方法で船の重量を軽くし続けます。やがて浸水がはじまり、正午には船体は右舷に大きく傾いてしまいます。
その日の午後(注:正午で日付を変える船の習慣的日付では翌日)、錨を運び出し、さらに引き綱を引っ張ったり、4つのポンプを動かして排水したりしますが、なかなかうまく行かず、浸水量がポンプによる排水量を上回る程になってしまいます。それでも10時20分頃には船体が浮上し、船を深い水域に引いて行くのですが、"船倉には3フィート4インチ(注1.016m)の水がたまっていた"そうで、また、中錨(注:いくつかあるうちのひとつ)を回収する際に錨索を失ったり、小さな主錨をひとつ失ったり、さらに漏水が増えてきて乗組員全部をポンプにはりつける事態におちいったりで大へんな苦難の状況になったようです。
翌朝の8時前には漏水が減って、陸地にむかって進みはじめたとのことです。その午後(注:船の日付で13日)には帆布を詰めることによって船の浸水を防ぐことに成功し、数日後には船を陸地にあげて修理にとりかかることができたとのことですが、損傷はかなり大きく修理に4日ほどを要しています。
この間の経過、6月11日に座礁し、それから23時間岩礁に乗っていて、岩礁を離れて陸地に2日後に着いて修理を行いますが、その後の水路を探したり、潮や風向きが好都合になるまで待つことにより、ここを真に離脱できたのは8月4日だったとのことです。このとき8月6日が満月なので大潮にかかる時期だったわけですし、また風の具合が良かったようです。なお、この時の船の喫水は4mちょっとだったようです。

(この修理の間、カンガルーを見たようなのですが、"カンガルー"という言葉では書いてありません。"あの動物"と書いています。1ヶ月以上ここで潮待ちをしたあとで、やっと現地人の言葉の音写で"カングールー"とか"カングルー"または"カングーラ"という言葉が出てきます。)

いずれにしても、海図のない未知海域のグレート・バリアリーフを通ろうとしていたわけですから、全く事故がないとすればそちらの方が不思議だったとも思ってしまいます。キャプテン・クック自身、この過程で最悪の時には、いったん陸で船を解体してその材料で新しい船を造って帰途につかねばならないかと考えたこともあったようです。

(グレート・バリアリーフの衛星写真)


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