プトレマイオス曰く、(天動説において)"地球は明かに全体として球形である" [あれこれ]
"地球は明かに全体として球形である"--クラウディオス・プトレマイオス
"地球が明かに球形であることを知るには、日月及びその他の星の出没が地球上のすべての住民にとって同時に起るのではなく、先ず東にある住民に、次第に西にある住民に起ることを観察すれば十分である。
"何となれば常に同一の絶対時間に起る食現象(殊に月食)は、太陽の南中を基準に取った時間では同じ時刻--即ち正午から等しく距った時間--には見えないで、どこでもこの時刻は東にある観測者にはより早く、西にある観測者にはより後れることを知るからである。
"ところで両者が食を見る時間差は相互の距離に比例するから、この事実によって地球の表面が確かに球形であり全体として曲率が斉一であるから、各部分は次の部分のさまたげとなって、すべて同じように視界を限るようになることが結論される。
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"最後に海上で任意の点から任意の方向に山或は高地に向けて航海するとすれば、曾て水面の曲率によって隠されていた山或は高地が海上に出現するのを見るのである。"(注:強調は後の参照のため)
(C.プトレマイオスによって西暦2世紀に著された天文学書 "アルマゲスト"の第1巻第3章より;薮内清訳 「アルマゲスト上下」、宇宙物理学研究会、1949)
天動説のプトレマイオスにしてこの言がすでにあったのに、その後なぜ地球は平たいなどという俗説がまかり通っていたんでしょう。それは、やはりヨーロッパの中世において古代と知識の断絶があったということのひとつの現れでしょうか。
プトレマイオスは地理学者でもあって、経度の概念を用いた地図を書いたりしていたようで、イスラム圏に残っていたそれらのその地図や文献がヨーロッパではルネサンス期にラテン語化されて導入されたようです。地中海世界そして広くはローマ帝国の地理学者プトレマイオスはカナリア諸島やインド、漢帝国を視野に入れつつも、大西洋やアフリカ大陸南方は通過不可としていたとのことですが、地球が球形であるというプトレマイオスの観点は後に大航海時代の航海者の行動に根拠を与えることになったはずです。いや、と言うより、プトレマイオスを知った誰か冒険者が西まわりで進んでみようと考えないと思う方がむしろ不自然です。
王立地理学会(英国)の世界時計(1979年)
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