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C.ダーウィンによるサンゴ礁成り立ちの説明 [ビーグル号]

ダーウィンの考えたサンゴ礁生成の理論

C.ダーウィンはビーグル号(H.M.S. Beagle)に乗っている間、太平洋横断に際していくつかのサンゴ礁を通り過ぎています。さらに、その後インド洋において、ココス諸島(キーリング諸島)にビーグル号が停泊していた時、サンゴ礁というものをつぶさに観察し、ライエルの"地質学原理"を読みながらかねがね考えていたサンゴ礁の成因についての自らの理論を確認し、後に英国に帰ってから発表しました。これは今日ではサンゴ礁生成についての古典的文献となっていて、今でも基本的には正しい理論とされています。
注: C.ダーウィンの"自伝"によれば、南米大陸西岸で侵蝕と堆積、土地の隆起と沈降について考えている間に、その一環としてサンゴ礁成因についての理論はすでに考えついていたとのことです。

サンゴ礁とは、固い骨格を発達させるサンゴ虫のなかでも礁を作り群生する造礁サンゴというタイプの小さな動物たちによって造られる、主に石灰岩の層からなる岩礁です。暖かい海の造礁サンゴは日当りのよい高水温のきれいな、塩分の薄くならない海水の浅瀬で活躍出来るようです。

熱帯圏(一部亜熱帯)の暖かい海のさんご礁は海の熱帯林とも言われる豊かな生態系を持ち、地球上での魅力的な場所でもあります。礁湖といわれる極めて穏やかな部分とそれをとりまく荒々しい外洋との対比は、ある種本能的に響くような感動を与えてくれます。

ダーウィンの場合、もとからの博物学的興味だけではなく、実際にココス諸島での滞在でサンゴ礁に魅せられたということは事実のようです。博物学者として、もともとサンゴ礁の成因には関心を持っていたのだろうと思われるのですが、イギリスで論文を書くにあたってはやはりココス諸島でのサンゴ礁体験が重要な契機だったのでしょう。
ダーウィンの文献とは:
Darwin, C. R. 1842. The structure and distribution of coral reefs. Being the first part of the geology of the voyage of the Beagle, under the command of Capt. Fitzroy, R.N. during the years 1832 to 1836. London: Smith Elder and Co.
で、オンラインでは
http://darwin-online.org.uk/content/frameset?itemID=F271&viewtype=text&pageseq=1
で読むことが出来ます。

ダーウィンの"航海記"の第20章にその要約が載っていますので、比較的容易に内容を見ることが出来ます。

それによりますと、ダーウィンはまず、サンゴ礁を3種類に分類します:
1) 裾礁(きょしょう; fringing reef)..海岸沿いに形成されている
2) 堡礁(ほしょう; barrier reef)..海岸から距離を置いて並走する
3) 環礁(かんしょう; atoll)..中央に島がなくサンゴ礁だけが環状になっている
の3通りです。

(裾礁)

(堡礁の衛星イメージ)

(環礁の衛星イメージ)

"さんご礁形成の理論で、この三大区分を包括しないものは、完全なものとは思われぬ。" ("航海記"(下)第20章)

ダーウィンの考えは簡単にまとめれば次の通りです:
まず(火山島または大陸などの)陸地にすぐ接するようにサンゴ虫の活動により、陸地を間近で縁取ったような形の裾礁が出来ます。 きれいな水を好むというサンゴ虫の特徴のために内側よりも外洋側の方にわずかに高い礁が出来ることが多いようです。
時間とともに次第に陸地が沈降するとしてみましょう。すると、それまで陸地だったところを海水が占めることになりますが、あまり深い所では生きられないサンゴ虫が、それまで生活し骨格を堆積していた所でそのまま上方に、またはそれより外洋側に向ってしかも上方に、その生活活動および骨格を積み上げてゆきます。この結果、サンゴの石灰分が堆積する所と、後退する陸地の間には、海水の礁湖または水道が出来ることになります。この結果が堡礁(バリアリーフ)です。
このあと、さらに陸地の沈降が進む一方で、以前からサンゴ虫の活動する所では上へ上へと石灰質の積み上げが続けば、中央部にある陸地部分は海面下に沈んでも、周りのサンゴによる石灰岩の部分は海面上低くに姿をとどめ、環礁という形をなす、というわけです。

要するに、ダーウィンのサンゴ礁形成理論の基本にあるのは、サンゴ礁の存在する地域における陸地の沈降の事実だということになります。もちろん成因としてはいろいろな要因を加味して考えなければならないのでしょうが、ダーウィンの説によれば、基本的に上に分類した3種類のサンゴ礁の形態というのは、サンゴ礁一般というものの、陸地の沈降の速度ともかかわる各段階の表れである、ということになるわけですね。

ダーウィンの沈降説によればサンゴ礁の下部にもっとサンゴの層が存在することが予測されますが、実際その予測は後のボーリング調査で実証されているそうです。そしてまた現在のプレートテクトニクスの理論によれば大洋の火山島の沈降現象は十分納得のゆく現象だということです。

"われわれは一々の堡礁に、その土地が沈下したことの証拠を得、一々の環礁に、現在は既に消滅してしまった島々の記念碑を見る。われわれはこうして、一万年も生きつづけて、過去の変化の記録を握っている地質学者のように、この地球の表面が破壊し、陸と水とが互いに入れ代わった大きな機構について、若干の洞察をなし得ることとなる。"(同上)

(堡礁の図)

(環礁の図)

注1: ビーグル号とともにダーウィンの滞在した南キーリング諸島は全体でひとつの環礁で、個々の島はその水面に出ている部分です。

注2: ダーウィンの上記文献に載っているサンゴ礁分布図(クリックで拡大出来ます)..
1842_Coral_F271_fig10.jpg
(赤:裾礁 淡青:堡礁 紺:環礁)


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春分

環礁はとても魅力的ですね。マジュロとか一度行ってみたい。無理かな。
モルディブは行きましたが。新婚旅行でしたけど。
by 春分 (2007-08-18 19:58) 

さとふみ

マジュロ(マーシャル諸島)へは直行便がなく、グアムから飛行機で11時間ほどかかるようですね。こういうところはいっそのこと船で行ってみたい。航路がありませんけど。
by さとふみ (2007-08-19 09:11) 

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